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相生障害者支援福祉事業所リノベーション

手前が販売所、奥が作業所の配置。カウンター越しの見通しが良く表通りまで視界が開ける。空間がシームレスに繋がり、混ざり合う。

ファクトリーな装いとホームな雰囲気、生産性と落ち着く場の同居・混在。

可変性のある家具の配置。作業者の心理に合わせてレイアウトの変更が容易にできる。

同じ高さの家具がヨコの奥行きを生み、棚板の反復が空間にタテの奥行きを呼び込む。

床仕上げの違いがエリアの別を認識させ、高さの違う家具や露わになった天井が空間にタテの奥行きを生む。

エリア境界に設けたシースルーの暖簾や既存の建具が空間を緩やかに繋ぎつつ、用途を明確に分ける。

床は既存Pタイルを剥がした風合いを活かしている。目地の黒ずみが思いのほか付いていた。よく通るところとそうでないところ、使ううちに消えていくであろう変化が楽しみな部分のひとつだ。よく使い込まれたところの黒ずみが激しく、今度は逆に消えていく…その差も面白い。

シンボルツリーが空間に潤いや活力、心理的な奥行きを与える。各スポットを演出しており、空間に与える影響・役割は大きい。緑は多いほどいい。見えなくなるほどに緑で覆われるような空間が理想の場所のような気がする。

日本の社寺建築に見られる胡粉の小口白塗り。合板家具をシンボリックに仕立てた。ペンキで代用した白塗りが空間を引き締める。

下がり天井がタテ方向に抑揚をもたらす。木毛セメント板のテクスチュアがLGSと相まって場のテイストを決定付けている。

 

 

このプロジェクトは障害者支援福祉事業所の小規模な改修計画で、計画地の近隣にある現作業所と、市役所内にあった販売所の庁舎建替えに伴う移転・併設計画である。

敷地は、駅前の飲食店や店舗・事務所が混在するエリアにあり、ビルの1階路面側に位置する。直近まで事務用品卸売会社が入居しており、いわゆる事務所の内装がそのまま居抜きとして残っていた。もともと1室だった事務室は、改修前は天井までのパーティションで3つのエリアに区切られていて、これからの利用形態や機能性を考え、それら一部を再利用しつつ、見通しのきくピュアで可変性のある空間を目指した。

業務内容は、商品にラベルやタグを付け・仕上げを施して箱詰めすることで、その一部を併設店舗で販売する仕組みだ。全ての工程に作業者が関わるため、計画には動線の置き方に注意が必要となる。

平面計画では、エリア毎に完全に仕切ることなく視覚的につなぐことを意識した。販売所を路面側に配置し、奥の作業所とはカウンターなどの上背のない家具で仕切り、明確にエリアを分けている。
ここでの仕事は、個人が籠りがちな工程・作業が多い。見通しが効くことで場の一体感がうまれ、解放的な環境になればと期待している。
座りっぱなしの、コツコツと目の前の作業を行う仕事では移動が極度に少なくなりがちだ。そのため、少しばかりの変化が必要と考えて回遊性を加えた。室内を自由に「動く」ことでリフレッシュしてもらうねらいがある。
個別作業にも対応する必要があるので、可動型テーブルをランダムな配置とした。これにより、利用者は他の存在を確認しつつも集中できる配置構成が可能だ。
ホールの既存パーティションも一部撤去することで動線がスムーズになった。用途のなかったこの場所に、混在する機能をまとめたスペースとして新たな使い方の提示ができたように思う。

高さにも注力している。
まず、壁などの仕切りが一切ないため、狭さを感じることはないだろう。そして、作業所の床仕上げを一部変えることでエリア分けが明確になり、利用者に繋がりながらも異なる性質を認識させる。また、壁に沿って並んでいる複数の箱型家具が多層的な展開をみせ、空間に「タテの奥行き」を持ち込む。さらに、活動のメインとなる販売所・作業所の既存化粧石膏ボードの天井を抜くことで無骨でピュアな内部が露わになり、少し高めだった天井高がより開放的に感じられるようになった。
LGS下地のシルバーの格子状が天井懐と室内とのタテ方向の緩衝帯としての意味を持ち、時には照明やインテリアエレメントなどを吊るす新たな要素としての顔を見せつつ、豊かな空間を創出してくれる。

利用者が取り組むコツコツとする作業は、正に積み重ね。

このタテヨコに伸びていく空間が、日々の作業に伸びやかさやゆとりを与えてくれれば…
そんな環境で仕事をして欲しいとの願いが詰まっている。
時を経て、あらゆる場所が少しずつ重なり合い、空気が混ざり合うように色んな機能が少しずつ行き来する…
そんな場所となっていくのが理想であり目指すところだ。

今回は、出来るだけ既存を残しながら、家具を持ち込み構成した。おもちゃ箱をひっくり返して、取り出したものと買い足したもので再構築したような体験ができた気がしている。

ストック利用の在り方が取り沙汰されて久しい。
短絡的なやり方に陥らないためには「2歩ほど先を見る」ことが程よいのではないかと考える。それがエシカルなデザインに繋がっていくように思う。
施設・店舗・住宅いづれにおいても、既存を活かす手立ては「おもちゃ箱」の中のようにまだまだ詰まっていて、極小ローコストな部類のリノベーションにも可能性は幾重にも見え感じている。

 

クライアント:特定非営利活動法人兵庫セルプセンター
施工:㈱近藤建設
事業内容:リノベーション